北海道研修レポート2017(2)
- |from. PAINDUCE
- 2017/08/25
こんにちは、オオサワです。
前回につづいて、北海道研修レポートをお届けします。
江別製粉さんの工場では、製粉の過程を順を追って説明していただきました。
ローラーを使って挽く「ローラー挽き」。石臼を使って挽く「石臼挽き」の工程、また細かい希望に添えるよう少量でも製粉することができる小型製粉機を見せて頂きました。それぞれの機械で、自分たちの求める性能、機能を追求し、町工場へ特別に依頼し部品を作ってもらうなど、たくさんの工夫とこだわりのある工場でした。
小麦粉が畑からお店に届くまでに、想像できないほどの時間と手間がかかっていることや、製品管理など惜しみなく手を尽くしてくださっていることを、現場を見ることでまた改めて感じることができました。
二日目は、十勝に移動し、アグリシステムさんに佐藤さんの農場へ案内していただきました。
まず収穫中の「きたほなみ」の農場を見学後、新たに挑戦しているというスペルト小麦の農場を見学させていただきました。スペルト小麦は、品質改良などがほとんどされていない古代種の小麦です。普通の小麦は、穂を両手でこすると外皮が剥け、粒が出てきますが。スペルト小麦は粒も大きく、外皮も分厚いのか、両手でこすってもなかなか粒が出てきませんでした。佐藤さんの栽培されているスペルト小麦は背が高く、凛として、力強く感じました。
ここのスペルト小麦の一部が店に入るという事を聞き、今から楽しみで仕方がないです。
ここでアグリシステムの伊藤さんがアレルギーや、ポストハーベストのことなどいろいろと教えてくださいました。品質改良や遺伝子組換えなどが繰り返されることでアレルギーが増えてきたこと、農薬の使われ方や意識のされ方など。もちろんそれが全ての理由ではないということも説明してくださいました。
アグリシステムさんは自社でオーガニックの農場なども持たれていますが、今まで農薬も使用しながら栽培してきた農家さんに無農薬を勧めるのは、やはり難しいとのことでした。かかる手間や時間。それに見合うものが戻ってくるのか。ヨーロッパ諸国に比べ、日本はまだオーガニックに対する認識や需要が少ないといいます。
私も商品を買うとき、価格を見ます。商品が店に並ぶまでの背景を、どれだけの人が理解し、評価し、それに見合う対価を認識できるのか。とても考えさせられました。
その後、アグリシステムさんの自社工場を案内していただきました。
小麦を保管する倉庫の床には炭が混ぜられ、マイナスイオン効果があるとのこと。製粉工場では、石臼を見せて頂きました。石臼の挽くスピードを上げると温度が上がってしまい、挽かれる小麦にも影響が出るため、効率よりも品質を守るために挽くスピードを制限していることや、全粒粉は外皮と中身を後で混ぜるのでは無く、一番外側の栄養のあまりない硬い外皮だけを取り除き、丸ごと挽いているなど、こだわりの詰まった丁寧な工程を説明して頂きました。
最後に中川さんの農場へご案内いただきました。農薬も使わない、堆肥も使わない、自然栽培の農場でした。その年に麦を作ったら次は菜種など他のものを作り、緑肥として土に還してまた麦を作る。貰うだけではなく還す。という考え方で、また雑草も光を遮らない高さのものはそのままに、本当に自然のまま栽培されていました。
こちらでは、名車といわれている(らしい)「8050」のコンバインに実際に乗せて頂きました。畑全体を見下ろしながら刈っていくと、雑草と麦が共生しているのがよく見てとれました。目の前で実際に麦が刈り取られていくのは迫力満点で、とても貴重な経験をさせていただきました。
今回、農家の方々が刈取りを急いでおられたのは、週末の雨予報の為でした。収穫時期に雨が降ると、穂発芽という現象に見舞われ、商品としての価値が無くなってしまうそうです。
だいたい二、三日雨に当たるとほとんどの小麦が穂発芽し、「キタノカオリ」という品種は一日で穂発芽してしまうと教えて頂きました。自然を相手にするという事は、本当に難しいことで、手間暇をかけて育ててきたものが、一瞬で無になってしまうこともあります。そんなリスクを抱えながらも、汗を流し、手間と時間をかけ、大切に育ててくれる人がいる。この研修旅行で、実際に生産者さんとお会いして、目で見て、直接お話することで、その「誰か」は「●●さん」になり、他人事ではなくより身近なものになりました。
私は普段、販売スタッフとして店頭に立っています。長い長い時間をかけて、たくさんの人の手を経て店にやってきた小麦粉が、製造スタッフの手でパンになり、やっとお客様の手に渡る、その最後の窓口です。
美味しいね。ありがとう。そんな言葉を一番耳にすることができます。その言葉を、私は製造スタッフや、生産者さん、製粉会社の方々にも伝えられたらいいな、と思いました。お客様にも、皆さんの想いを伝えられたらいいな、と思います。今回はとても貴重な機会を与えて頂き、本当にありがとうございました。